嘉悦がちょっと出た、NHKのプロジェクト2030についてちきりんが取り上げていてちょっと面白かった。

http://blogos.com/article/49206/

我が嘉悦大学、何度かNHKに取り上げて頂いております。良く、NHKは民放に比べると本当に丁寧に取材するというのは本当で、数分のカットのために数日使ったり平気でするので、うちの大学「なんか」にそんなに時間つかって大丈夫なのかと、その点に於いてむしろこちらが心配になるぐらいです。よく言われる「変なところだけ切り取られた」という不満はそんなにはない(ないとは言わないが、しょうがないよねの範疇)。

ただし、切り口の視点はあんまり変えてくれない。今回だったら「なぜ今時の若者は(やることもないのに)中退しちゃうのか」的視点からは基本的に離れない。

でもさあ、楽しくなければ中退するのって当たり前じゃない? なぜも何も。

嘉悦はよく中退防止の取り組みを取り上げて貰うんだけど、いろんな改革をやってる当事者である我々(というか私)は、「中退防止」を主眼に上げて取り組んではいないのよ。結果として中退が減ることを期待していないとは言わないけど。じゃあ何をしたいのかと言えば、「今の学生が楽しく学べる環境の実現」の一点につきる。

いろんな意味で楽しくないことなんて、人間やるわけがない。やれるかもしれないけど、パフォーマンスはもの凄く下がる。

「中長期的に見ろ」って言われたっそもそも人間には双曲割引がある。少なくとも短期的にやってることがどう中長期につながるのかが漠然とでも納得できなければ、「今楽しくない」に勝てる訳がない。

短期的につまらないことにつまらないままで取り組めるのは、「中長期的に希望が持てる」っていう楽しさが成長期待値として含まれている場合だけ。社会全体に希望がなくて、自分の境遇が客観的に見て平均もしくはそれ以下である時に、なぜつまらないまま取り組めと思える?

Fランク上等、ゆとり上等。だって私たちの大学が社会において担っているのは、前提条件が違う時代の教育であり、しかも多くは「20年前・30年前は大学に来なかった層」なんだから、「かつてイメージされていた大学の理想像」とは全く違うものであって然るべきなんじゃないの。「どうすれば大学が楽しくできるか」の戦略は違って然るべき。「そんな奴大学進学するな」というのは簡単だが、えーと、進学しなかった場合どうすればいいんですかね。別種の似たような教育問題が別の場所で発生するだけじゃないの。とりあえず現場にいる我々と致しましては、現場での改良を考えますよとりあえず。

そもそも「大学の楽しさ」ってのは自明ではない。しかも長年かけて「学校はつまらない」と学習してきた学生にとって「そのままで」大学を楽しむのは結構難しい。学生に「とりあえず大学に来てみよう」と働きかける事で、それによって「大学が楽しめるかもしれない」学生が増えるんなら、我々の大学のポジションとしては全然アリなわけですよ。

あと、どうしても「下を引き上げる」的な課題ばかり取り上げられるけど、イヤになる分量の課題とか、数日徹夜してプレゼン仕上げる的な、結構ハードな事うちの学生さんたちやってるんだよ? 伸びてるいい学生は本当にすごいと思うし、些末な知識ではなくて学生の知的能力・経験の「伸び」を図る指標があるならー、(まあその都合がいいそれがないから困っているわけですが)、かなりいい大学だと思うんだ。

「今時の若者は」と言うが、世代全体の可能性として彼らが前世代より劣っているとでも? もしある指標が前世代より落ちているのだとすれば、その指標が落ちている代わりに伸びている何かがあるんじゃないのか? 全体としてみたら、「伸びている指標」で図られる能力が、「落ちている指標」で図られる能力より伸びやすい・必要とされる社会環境だから、という可能性は? 

例えば、今時の若者は本を読みません。でも、テキストベースのコミュニケーションは明らかに広がってるよね。

とりあえず(学生の)現状を肯定してみる。で、その良い部分をより活かしつつ、問題点をサポートする形にシステムを変更してみる。若者にケチつけんのはそれからでも遅くないんじゃない? と思うわけだけど、NHKの切り口はどうしても「今時の若者はどうして中退しちゃうのか」になっちゃうんだよね。しょうがないけど。

あーとはいえ、お前ら大学さぼってんじゃねーぞ、と。

そんじゃーね(ちきりんぽく)